剣の記憶


 ───此処に一本の剣がある。
 
 剣は、それだけでは剣でしかない。だが、剣は私が握れば一つの命となる。
 すべからく、命を殺すのは命だ。
 即ち、私が握った剣は、敵を殺す為の命。

 幾百もの敵を刻み。幾千もの敵を突き殺す。
 私の手に宿る命は、貪欲に命を喰らい尽くす。
 そして、ただ紅い河を背後に残して、命は次の獲物を求める。
 
 それを繰り返している内に何時か、自分の名前も忘れてしまった。
 だが、名前などに意味は無い。剣には名前は必要ない。
 そう、私もまた一振りの名も無き剣。剣に命を与える孤高の剣。

 だから、私の名を呼びたければただこう呼べばいい。
 剣の羅刹 ───すなわち、"サブナク"、と。

第一章 邂逅

第二章 激突

第一節 深淵からの騎行 第七節 弱者の街
第二節 疾走の蒼  
第三節 暗闇からの奇襲  
第四節 法の騎士  
第五節 竜の覇王  
第六節 深淵からの逃走  


 


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