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 窓際の席に座ってたら、飛び降り自殺して落下中の先輩と一瞬目が合った。
 ────笑っているみたいだった。 

 一緒に飛び散っていった花が、とても綺麗だ。

 

 
 

真如の月 / ネガティブ・コンプレックス

 

 オレは昔からチェスが得意だった。
 最初にチェスに触れたのは、確か5歳の頃だ。周りの子が走り回ってるそばで、オレはチェスで遊んでいた。
 何故、オレはチェスで遊んでいたのか。

 ───それは、チェスが楽しかったからだ。

 定まった反応。決まった反応。分かり切った反応。
 それが幼いオレには、とても安心できた。気まぐれに動く奴らより、ずっと信用できた。

 ───でもね。
 
 ある日気付いてしまったんだ、チェスが退屈なことに。
 だって、定まってて、決まってて、分かり切っている以上、ある点を超えるとチェスは単なる記憶比べになってしまう。
 極論すれば、全ての打ち方を知っていれば誰だってチェスの世界王者に勝てる。それじゃあ、つまらない。
 
 ───だからオレはチェス盤を投げ捨てた。

 そう、世界はどうしようもなく退屈だ。
 でも、オレはどうしようもできない。
       
 もしも世界をどうにかできるとしたら、それは。
 神様だけなんじゃないかな?


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