Other Side ─夜─

 

───今。


幕開け─Talk With Devils -One-


 ──ん?なんだよお前。何か用か?何?聞きたいことがある?別に良いけど今機嫌が悪いからな。さっさとしてくれ。えぇ?俺が何でこんな事をやるか?しるかよ。こっちのほうが面白そうな事やってたからだよ。金とかそういう問題じゃねぇ。俺は自分が面白いと感じたほうに進むんだよ。ま、お前等凡人には一生かかってもわからねぇだろうな。それはそうとお前はルーシーモノストーンって知ってるか?知ってるわきゃねぇよな。70年代と80年代に「若者」だった奴だよ。ま、知らないなら良いけどな。俺に関係があるかって言ったらまぁ、無いだろうな。けど俺の「中」には関係があるだろうな。別に大量殺人犯とかじゃないぜ?大量殺人鬼だったらエドワード・ゲインあたりを出すさ。なんつったって先駆けだからな。まぁ・・・ジャック・ザ・リッパーとかは居るけど、奴は又違う話さ。何、目指す人?バカバカしい質問だな!笑える質問だ。これでテッドバンディーとかチャールズ・マンソンとか言えば話としては面白いんだろうがな!別に居ないさ。俺が目指すのは俺だけだ。それ以外考えられないね。

Y

キルスから突然電話がかかって来たのは東から事情を聞いた次の日だった。電話の内容は至極簡単。キルスは電話越しに楽しそうな声で「男が死んだよ」とだけ伝えた。「男」とはおそらくターゲットのことを指すのだろう。何がどうなっているのか全く理解できないが、今日呼ばれているので今キルスのビルに向かっている最中だ。キルスのビルは街の端のほうにある廃ビルだ。僕の家から歩いて約20分、バスを利用すれば10分足らずのところにあるのだが、バスは時間帯的に混雑している可能性があったので使わなかった。ビルの前に来た。前からこのビルの前に立つと何か違和感を覚えるのだが、どうやら何かキルスはこのビル全体、寧ろこの敷地内に何か仕掛けを施しているらしい。本人から確認はしていないのだが、おそらくそれで間違いは無いと思う。

階段を上がってキルスがいつも居る3階まで上がる。この廃墟にはエレベーターなんて気の利いた物が無いので、徒歩で3階まで上る。3階について、一番大きい部屋に行くとそこには東、人形、そしてキルスが木製のテーブルを囲んで座っていた。誰の顔からも何が起こったのか予想できないほど全員バラバラの表情をして座っていた。

東は天上を見つめてタバコを吹かしていた。

人形は携帯を弄っていた。

キルスはあいも変わらずニヤニヤと僕のことを見ている。

僕は開いていたテーブルの一角に座って東のタバコを勝手に取って吸った。

その時間が5分ほど続いた後キルスが先に口を開いた。

「さて、まぁ昨日連絡したわけだけど、今日集まってもらったのはほかでも無い。この間話した仕事の事なのだけれども。あぁ、斬はまだ聞いていなかったっけか。まぁ別にもう、はなす必要も、無くなったわけだね。何か言いたそうな顔をしているね?殺郭。」

「あぁ、一つだけ、もう、話す必要も、無くなった、って言うのはどういうことだ?人形には関係が無い話しだったらここに居る必要も無いだろう。」

「いや、いや、そうではない、うん。此処で話しても埒が明かないね。現場まで直接行ってみようか。じゃぁ殺郭。君の後ろに僕の義手と義足が置いてあるから取ってくれないかい?それとも君か東が運んでいってくれるなら嬉しい事この上ないが。」

東が僕のほうを見てとてつもなく嫌そうな顔をしたので僕は何もいわずに義手と義足のセットをキルスに手渡した。真っ黒な義手と義足だった。僕が今まで見たことが無い義足だ、花柄や、ピンク色の趣味の悪い義足は度々見てきたがこんなにシンプルな義足は見たことが無かった。

キルスはカチャカチャと色々した後、スクリと立ち上がった。そして何もいわずに階段のほうへつかつかと進んで振り返った。

「じゃぁ、行こうか。」と言って階段を下りていった。

キルスはビルを出て、駅裏の人気の無いほうへ進んでいった。そして住宅地へ。そこは少し待ちの中心から外れたマンションや一軒家が立ち並ぶ閑静な・・・とは言いがたいが人が住んでいる地域だ。

キルスは門を壊して、昔はたいそう豪華だったであろう家へ入っていった。踊り場を抜けて階段を上がり、そして勝手知っているように屋根に続くドアを押し開けて屋根裏へと上がっていった。

最初にキルスが上り、次に東が上がった。そして人形が上がり、何時のなにやら出てきていた澪が上がった、最後に俺が上がる。

屋根裏は全くの闇だった。キルスが電気をつけるといって電気をつけた。一瞬明るさに目がくらんだが、すぐに視力を取り戻した。そして目の前に広がったのは血で満たされた屋根裏部屋と、おそらくは昨夜までは息をしていたであろう男が転がっていた。

体のパーツがバラバラになって。

 

 


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