○○○○ [CONTENTS TOP]

─────○○○○─────

 


同居人が居る。名前は・・この短いお話には必要ないだろう。
彼女はいつの間にか俺の部屋に居た。許した覚えもないし、誘った覚えも無い。
けどなぜか気の合う、二人。そんな二人のありふれた日常のひとかけら。会話と笑いでありふれた、一日。

「ねー。・・・ねー!」「何、うるさいね。考え事してるんだから静かにしろって。」
「外行こう外!気持ちいいよー、こんなに晴れて。ちょっと雲が出てきたことは眼を瞑る方向で。」
「瞑るなよ。傘もってかないで雨降られたらたまらんじゃん。壊れちゃうじゃん。」
「ダレが?!」「俺の毛根。」
「もー、ふざけたことばっか言ってないで外でようよ。じゃぁわかった!あれいこうあれ!」
「あれって何よ。あ、映画?」「じゃぁそれで!」「じゃぁって何!本当はどこいこうと思ってたんだよ?」
「いや、別に考えてはいなかったんだけどね?」
「却下だよ却下。ことごとくすがすがしいまでに却下。」
「もー。いいじゃん、誘ってるんだからさ。ストレス?毛根死ぬよ?」
「うるさいよ。毛根ネタはいいから。」「ところで何書いてんのよ?」
「ん?新作のベース作り。」
「またバンドかよー。私を構えよーかまえよーかーまーえーよー。そんなに男のむさくるしい世界にどっぷり浸ってると勘違いされるよ?二丁目的な方々と。」
「されねぇから。大丈夫だから。第一男くさくないし。」
「わからないじゃん。意外と。ベース×ドラムとドラム×ベースファンで意外と衝突してるかもよ。」
「ねぇよ。第一うちのベース俺だし。ドラム女だし。普通じゃねぇか。ありえる話だろ」
「何?!ありえるの?!」
「ないけど!無いけど!可能性の話ね!」
「ムキにならないでよ。どれ、ちょっと見せてみなさい」
「ちょい、おい、まだできてねぇから。第一お前俺のバンドの音聞いたことあんのかよ?」
「あるよ。いいよね。正確、しかし時には感情的に叩くドラムがあり、冷徹無比といっても過言ではないほど確実に音を出すベースがその上に太くのり、自由という音を表現しているといっても良いほど自由奔放にうなるギター。そして歌は上手いのにあえてそれを出さずに地声で勝負するヴォーカル、バラードではしっくりと、しかし反対のシャウトパートではこれでもか、ってぐらい絶望と悲壮を味あわせてくれる声。」
「・・・うぉお、多少引くぐらい聞きこんでんなお前、」
「まぁね。自称ナンバーワンファンですからね。エッヘン」
「何?エッヘンとかいうか?いまどき。」
「いや、咳払い。」
「文字じゃ伝わりにくいから。」
「文字?なんのこと?」
「こっちの話だ。お、公園で子供がサッカーやってんぞ。」
「わー、寒いのに良くやるよねぇ。サッカーボールって意外と痛いよね。奴ら半ズボンだし。」
「子供のときはなぜかできんだよなぁー。さすがにもうできねぇけど。っつか半ズボンって時点で結構きついものあるよな、この年になると。」
「あー、あんまり子供のころとか覚えてないなぁー。私もやってたのかなー。顔面オンリードッヂボール。」
「ねぇから。鼻血祭りじゃねぇかよ。冬とかシャレにならんぞ。」
「あー、けどああいう子たちが私たちみたいになっちゃうと思うと悲しいよねぇ。年をとってもああいう元気な姿を見せてほしいものだよね。」
「そうだなぁ。この年で半ズボンは考え物だけど否定はしないな。」
「こういうの写真でとっておいたら後々ゆすりのネタとかになったりしないかな。」
「なりそうなもんだけどな。」
「とっておこうよ。折角デジカメってもんがあるんだからさ。さすがにゆすらないけど」
「それも良いかもなー。どれ、ひとつ撮っとくか。」
「お、何だそのポーズは。」
「こうやって指でスクエアを作って図柄を決めるんだよ。こうやって。どこからどこまでを入れるか、とかさ。」
「へぇー。物知りだねぇ。こう?」
「お、そうそう。」
「こう?」
「そうそう。」
「こう?」
「そうそう。」
「こう?」
「お前はこの簡単なポーズに何の違和感を感じてるんだよ。決まったから撮るか。」
「お、デジカメ二つもあんの?」
「うん、こっちが新しい奴。うぇ、電池きれてやんの。そっちは?」
「こっちも。充電しとけよー!いつなんどき写真とるかわからないだろー!」
「普通は写真ってこんな拍子に撮るもんじゃないんだがな。しょうがない、代わりのバッテリー探すか、あったかなぁ。」
「こっちは?っつかこれは?」
「あー、それじゃないんだけど、たぶん対応してるな、お。撮れるぞ。」
「折角二つあるんだから二人でとってくらべっこしようよ。」
「いいぞー。負ける気がしねぇな。」
「「せーの」」
「うわ、ぶれた。」
「へっへーい、私の勝ちー!」
「なんだよー、畜生。」
「じゃぁ映画見にいこー。」
「なんで。そういうルールなかったじゃん。」
「うるさい負け犬!」
「まぁいいけどさー、何見に行くのよ」
「ホステル」
「えぐいな!まぁいいけど、じゃぁ支度するか。」
「うん。」
「あ!あれみなよ!」
「おー、何か飛んでるねぇ。飛行機?」
「かなぁー。UFOかもしれんぜ。」
「こわー。アブダクション!」
「アブダクションであってたっけ・・・?」
「いや、自信ない。」
「俺も答え知らないや・・・」
「「・・・」」
「いや、あれ違うよ。飛行機じゃない。」
「アトムじゃね?あれ。またどっかで事件かー。大変だなぁ。ってか俺も自由にそら飛べたらなぁー。ちょっとうらやましい気もするよなー。空飛べたら映画館までひとっとびだぜ。」
「う・・ん・・・」
「気持ちいいんだろうなぁー。飛んでみてぇなぁー。なぁ?・・・・なぁ?

バッテリー、あったかなぁ・・・」

題名「ATOM」

END




○○○○ [CONTENTS TOP]