全体的な印象は、”灰色”だ。
上を見上げてみれば灰色の空が永遠と広がっているし、目の前には藍色の地平線があり、右も、左も、そして多分後ろもきっと似たような光景が広がっているのだろう。
ただ、そこを歩いている俺だけに色があった。
どうにもおかしい話だ。
まぁ、かくいう俺も、ちょっと笑える位酷い格好だ。
髪は、まぁ最後に整えたが何時だか覚えてないからあれだが、ぼさぼさだし、服は見るも無惨に中途半端に破れている。多分、眼も微妙に焦点があってないだろう。道端であったら確実に避けたい手合いだ。
…こんなくだらない事でも、思考していないとおかしくなる。
一言でいえば、彼処はそんな場所だった。
ハイイロジゴク
何回繰り返したか分からない状況確認を行う。
とりあえず、随分長く歩いてた事は確かだ。
右も前も左も後ろも、よく分からないがとにかくさっきから俺は何処かに向かって歩き続けている。
といっても、行き先なんてありゃしない。
単に立ち止まったらそこで何かが終わってしまうんじゃないかっていう強迫観念に取り憑かれてるだけだ。
此処では、世界は、ずっと静寂に包まれている。
動いてるのは俺だけで、だから俺の呼吸音と鼓動しか音が存在しない。
御丁寧な事に、足音すら、響いてこない。
歩きながら、辺りを見回す。
そこには、何もかも完全にない。ただただ灰色が空間を染め上げている。
黒でも白でもない、灰色。燃え尽きた色。
その色だけが、果てしなく広がっている。
…灰色こそが、世界を安定させると謡ったのは誰だっただろう。
白でも黒でもない灰色こそが、大破壊を遅延させると。
賭けてもいい。
そいつはきっと、この世界を見た事がなかったに違いない。
シロでもクロでもないハイイロ。
それは、 酷く退屈だ。
灰色は、全ての色を混ぜた時生まれるという。
要するに、灰色というのは終局なんだろう。そういえば、燃えた屋敷も灰色だった。
ならば、その灰色に覆われた世界はすでに終わった世界という事。
終わった世界が退屈というのは、俺のあんまり良くない頭にも分かる、道理だ。
で、そこに到ってようやく俺は気付いた。
此処は、終わった世界なんだ。
なのに俺だけがいるということは、終わったのは世界ではなく、俺だ。
要するに今現在、俺があるいている所。
それは 地獄だった。
・・・・・
「… ッ… ヒャ ハ は ハッ… 」
思わず、笑いが口から溢れた。
遠慮する必要もない。俺は背をのけぞらせて、気が違った様におおいに笑った。
地獄。地獄。地獄。
俺様は、とっくに死んでたのに、そんな事も気付いていなかったなんて。
「 くくっ ふっ ヒャッ… ッ 」
腹を押さえて爆笑する。
なんて、無様。こいつはとびきり笑える。
何が、「何か考えていないと精神がすり切れる」だ。
死んでいるのに、心が腐るも糞もあるものか。くだらない事を考えていた自分がおかしい。
「ヒャッ ハハハァ ッッ ッ!」
だから、笑う。天に向けて、笑う。呵々大笑。
俺の笑い声が、この灰色の世界の風に乗って、遥か彼方へと飛んでいく。
ああ、飛んでいけ。ずっと飛んでいけ。
この死んだ世界では、音が弱まる事もないだろう。ひょっとしたら、この世界を一周したあたりにあの声にまたたどり着くかもしれない。そう考えると、愉快でたまらない。だから、笑う。ひたすらに笑う。
気がついた時には、俺自身も、周囲の背景と同じ様に灰色になっていた。
それがとてもとてもおかしく、俺は更に力を込めて嗤った。
そのときだった。
誰もいない筈の、この俺の世界に、俺以外の、物音がした。
「ほお?」と俺は口元を半月にして喜んだ。
此処が地獄なら、死神か悪鬼がそろそろ出て来る頃合いだ。
そう考えると、更に愉快でたまらず、俺は嗤った。
きっと、そいつはさぞかしおどろおどろしい、悪魔らしい邪悪な格好をしているのだろう。
その死神だか悪鬼だかの姿をしかと見る為に、物音がした方へ俺は視界を向けた。
視界を向けた先にいたそいつの姿は、はたして、俺の予想通りだった。
最初に見えたのは、「黒」だった。
何時の間にか、現れていた巨大な十字架。
そのふちに座って、その「黒」はこちらを見下ろしていた。黒い、大きな帽子だかフードを冠って、同じく黒い衣を纏っている。そいつはこの灰色の世界にあって、奇妙な程に、しっくりと背景に一致していた。
そいつは、妙に整った口をにやにやと歪めながらこちらを見下ろしていた。
「よう、大将。てめぇが、俺をくびき殺す悪魔かい?」
俺は、その「いかにも」って感じの「黒」に話しかけた。
ーーーだが。
「いいえ。違います。」
あっさり、その「黒」は否定しやがった。
拍子抜けした俺を尻目に、その「黒」は勝手に喋り始めた。
「嫌ですねぇ、この私を小汚い悪魔と一緒になさらないで下さい。私は、通りすがりの魔術師ですよ。」
その声は、高い様で低い様で、正直よく性別が分からないが… 多分、美声といえるんだろう。
まるで、世界中の「黒」を凝縮した様なそいつは、ぺらぺらと、全く深みがないトーンでほざき続ける。
「… ああ。分かりますよ。なんで通りすがりの魔術師が、自身の『牢獄』に入り込んでいるか不思議なのでしょう?」
そこまで言い終わると、そいつは値踏みするかの様にこちらを見下ろしてきた。
「私はね、ちょっとした理由で意志が強い人間が好きでしてね。
たまに『牢獄』に『資格』がある人間を探しに来ているのですが… 正解だったみたいですね。」
「… てめぇが何を言ってるか俺は全くわからねぇんだが?」
ーーとりあえず舐められてる事は分かった。だから、「黒」が言葉をきった時に、ドスが効いた声をあげた。しかし、そいつは何が楽しいのか、ますます口元を歪めてから「いやぁ、すみません。お気に触りましたかね」と全く誠意のない口調であっさり謝罪した。
「いけませんね。私のよくないくせです。まずは、とりあえず私が誰かという貴方のご質問に答えましょう。」
「黒」は大げさに胸に手をあて、宮廷作法に叶った、しかし何処か道化じみた礼をして、聞いても無い質問に答えて名乗りを上げた。
「私は、アズベール。ヒトの為に黄昏を導くモノ。そして、望めば、それを承認し、しかるべき代償と共にそれを叶えるものです。」
「さぁ、『牢獄』の中にあって嗤う者よ。はたして、貴方には、私に認めさせるだけの望みがあるのかな?」
そういうと、そいつはとぼけた顔で嗤った。
2.クロの誘い シロとの決別
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後書き/後書きまで真似るもの。 ー独自性のない僕を嗤いたければ笑え。…鬱になってやるぞorz 編ー
此処の所、何故か電波が良い感じに来ているので誰も読んでない小説を書いています。
ちなみに誰も読んでないと思うので書いても寂しいだけなのですが、「孤の剣」の方と同じく、この話の「俺」は某チャットのヒトなら「あ、これってあいつだ。」って分かるキャラが主人公になってたりします。はい、本当にどうでも良いですね。
しかし、こう、状況展開が早すぎて、いけませんねこれは。
ちなみにまたしても誰も読んでないと思うのでどうでも良いのですが、
これ、実は昨日大体出来てました。それを何故アップしなかったと言うと、実は全部一気にアップするつもりだったからなのです。実際終わりの部分は出来ているのですが、此処までと最後とまでをつなぐのがまだ出来ていないのです。多分明日か明後日には書き上げるつもりですが、まぁ万年不更新の僕だから無理かもしれません。ははは。
さて、では最後に何かの間違いでこれを此処まで読んで下さった貴方に全力でありがとうと言いたいです。
どれ位ありがとうと言いたいかと言うと、思わずVCみたく竹槍でファントムを墜落させても構わない位です。
…ごめんなさい。意味不明ですね。○| ̄/_
ではでは、何かの偶然と不可思議なカミサマのご加護がありましたら、次の後書きでお会いしましょう。ではでは。