プロローグ‐融合・・・そして誕生
クライシス王国は、布や糸の質が高いことで知られる小さな国である。しかし、守りの堅い国としても有名である。それは、神の祝福を受けた聖女達や騎士団、魔法技術。科学技術の両方の技術力の高さもあるが、何より、クライシス王国に住まう魔族の多くが人間と近しい存在にあり、人間を守っているからだ・・・。
城が中心にあり、それを囲むように7箇所、国境沿いに位置する各場所に「銀の七君」と呼ばれる高位魔族と、その眷属達が住んでいる。彼らと、彼らの束ねし「銀の魔王−デスティニア」やその他の魔族達の存在が、クライシス王国の存在を確固たるものとしている。そのおかげか、この国では魔族信仰も一般的に認められている。
この物語は、そんな少し変わった国に起こった、小さな3人の女の子の物語である。
それは・・・ある日の夜のことだった・・・
空から光が落ちてくる・・・白と青と緑・・・3つの光が落ちてくる・・・夜もふかい、クライシス王国の夜空を、3つの光が落ちてくる・・・光達が話す。
「してやられた・・・残りの力ではこの世界での存在は難しい・・・」
「もはや転生はおろか、取り憑くほどの力もない・・・」
「ならば・・・まだ未成熟な魂と存在を同じくするしかあるまい・・・」
「仕方がないか・・・我らはまだ消えるわけにはいかん・・・人間を我らの問題に巻き込むのは忍びないが・・・」
「仕方あるまい・・・このままでは妖精界はもちろん、四界全てに影響することだ・・・」
「では・・・ゆくぞ・・・記憶が失われようとも・・・運命が我らを引き合わせよう・・・」
光が舞う・・・夜の空を・・・緑の光は神社へ・・・青い光は御屋敷へ・・・最後の白い光は・・・中心に聳え立つ大きなお城へと消える・・・そして・・・三つの小さな泣き声が上がった・・・。
それが・・・始まりの音・・・誰も気付かないくらい、小さな始まりの音・・・だけど・・・大きな・・・四つの世界を包むほど大きな曲の・・・始まりの音だった。
いまから丁度10年の後・・・音は旋律となり・・・3人の少女の物語を彩る・・・。